うちの子だけ?噛み合わせ・口呼吸・いびき…実は“歯並び”と関係していること

「うちの子、テレビに夢中になるといつもお口がぽかんと…」「寝ている時のいびき、もしかして普通じゃない?」――。お子さまの何気ない仕草に、そんな不安を感じたことはありませんか。それは単なる癖として見過ごしてはいけない、「口呼吸」という危険なサインかもしれません。
実は、その口呼吸が将来の歯並びを決定的に乱してしまうだけでなく、お顔つきの変化、虫歯になりやすい体質、睡眠の質、ひいては日中の集中力や学力にまで深刻な影響を及ぼすことが指摘されています。
この記事では、なぜ口呼吸がそれほど多くの問題を引き起こすのか、そのメカニズムからご家庭でできる対策、そして最新の治療法までを詳しく解説します。お子さまの健やかな未来のために、まずはそのサインを見逃さないことから始めましょう。
その口呼吸、大丈夫?歯並びや全身の健康に潜む5つのリスク
お子さまがテレビに夢中になっている時や、静かに遊んでいる時に、お口がぽかんと開いていることはありませんか。また、寝ている時のいびきや、いつも鼻が詰まっているような様子も気になるところです。
これらは単なる癖として見過ごされがちですが、実は「口呼吸」のサインかもしれません。口呼吸は、歯並びの乱れに直結するだけでなく、お子さまの健やかな成長に欠かせない様々な面に影響を及ぼす可能性があります。お顔つきの変化、虫歯のリスク、睡眠の質、さらには日中の集中力まで、深く関わっているのです。

歯並びが悪くなるメカニズム 顎の成長が妨げられる?
私たちの歯並びは、顎の骨という土台の上に成り立っています。そして、その土台の成長に大きな影響を与えているのが「舌の位置」です。
本来、鼻で呼吸している時、私たちの舌は上あごの天井部分(口蓋)にぴったりと収まっています。この舌が内側から上あごを適度に押し広げる力によって、あごはきれいなU字型のアーチ状に成長していくのです。正しく成長したあごには、永久歯がきれいに並ぶための十分なスペースが確保されます。
しかし、口呼吸が習慣になっていると、口が常に開いているため、舌は本来の位置から下の方へだらりと落ち込んでしまいます。この状態を「低位舌(ていいぜつ)」と呼びます。成長期のお子さまが低位舌の状態を続けると、顎の成長に次のような問題が生じます。
- ・上あごの成長が妨げられる
舌からの正しい刺激が上あごに伝わらないため、あごが十分に横幅に広がりません。その結果、U字型ではなく、前方に尖ったV字型のような狭いあごになってしまいます。 - ・歯が並ぶスペースが足りなくなる
狭いあごに永久歯が生えてこようとするため、スペースが足りません。行き場を失った歯は、重なり合って生えたり、捻じれて生えたりして、ガタガタの歯並び(叢生)になってしまいます。 - ・出っ歯や受け口の原因になる
上あごが十分に成長しないと、相対的に下の歯が前に出て「受け口(反対咬合)」に見えたり、歯が生える場所がなく前方に押し出されて「出っ歯(上顎前突)」になったりする原因にもなります。
歯並びは、舌が内側から歯を押す力と、唇や頬の筋肉が外側から歯を押す力の絶妙なバランスによって保たれています。口呼吸では唇を閉じる筋肉が弱まるため、このバランスが崩れ、歯並びの乱れをさらに助長してしまうのです。
顔つきが変わってしまう「アデノイド様顔貌」とは
長期間にわたって口呼吸を続けていると、お顔つきに特徴的な変化が現れることがあります。これを「アデノイド様顔貌(ようがんぼう)」と呼びます。アデノイドは鼻の奥にあるリンパ組織のことで、アデノイドの肥大が鼻呼吸を妨げ口呼吸の原因となることから、この名前がついています。
アデノイド様顔貌には、以下のような特徴が見られます。
- ・いつも口がぽかんと開いている
- ・唇が厚く、口元のしまりがない
- ・ぼんやりとした、締まりのない表情に見える
- ・下あごが十分に発達せず、後ろに下がっている
- ・顔全体が縦に細長くなる
- ・目の下にクマができやすい
これらの変化は、口を開け続けていることで口周りの筋肉(口輪筋など)が使われず、十分に発達しないために起こります。筋肉が緩むと、あごの骨が成長する方向にも影響を与え、お顔全体のバランスが変わってしまうのです。これは単に見た目の問題ではありません。アデノイド様顔貌は、あごの骨格が正常に発育していないという重要なサインなのです。
虫歯や口臭が発生しやすくなる本当の理由
口呼吸がお口のトラブルを招く最大の原因は、「お口の中の乾燥」です。私たちの唾液は単なる水分ではなく、お口の健康を守るための重要な働きを担っています。
| 唾液の主な働き | 説明 |
|---|---|
| 洗浄作用 | 食べかすや細菌を洗い流し、お口の中を清潔に保ちます。 |
| 抗菌・免疫作用 | 細菌の増殖を抑え、外部からのウイルスの侵入を防ぎます。 |
| 緩衝作用 | 食事によって酸性に傾いたお口の中を中和し、歯が溶けるのを防ぎます。 |
| 再石灰化作用 | 溶けかけた歯の表面を修復し、ごく初期の虫歯を治します。 |
しかし、口呼吸をしていると、常に空気がお口の中を通り抜けるため、大切な唾液が蒸発してしまいます。お口の中が乾燥すると、この唾液の素晴らしい働きが十分に機能しなくなります。
その結果、食べかすや歯垢(プラーク)が歯にこびりつきやすくなります。さらに、細菌が繁殖しやすい環境になり、虫歯や歯ぐきの炎症(歯肉炎)のリスクが著しく高まります。また、唾液による自浄作用が弱まるため、口臭の原因となる細菌が増えてしまうのです。毎日一生懸命歯磨きをしていても虫歯になりやすい、あるいはお子さまの口臭が気になる場合は、口呼吸が原因かもしれません。
いびきや睡眠の質低下に繋がる口呼吸の危険性
お子さまのいびきを「疲れているだけかな?」と軽く考えていませんか。実は、いびきは口呼吸が引き起こす、体の危険信号の一つです。
いびきは、空気の通り道が狭くなることで発生します。仰向けで寝ている時に口呼吸をすると、重力によって舌が喉の奥の方へ落ち込んでしまいます。この現象を「舌根沈下(ぜっこんちんか)」と言います。舌根沈下によって空気の通り道である「気道」が狭められ、この狭くなった気道を空気が無理やり通る時に、喉の粘膜などが振動していびきの音が発生するのです。
さらに深刻なのは、この状態が悪化すると、気道が完全に塞がれて一時的に呼吸が止まってしまう「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」を引き起こす可能性があることです。睡眠中に呼吸が止まると、体の中の酸素濃度が低下します。すると脳は危険を察知して体を覚醒させ、呼吸を再開させようとします。
お子さま自身は気づいていなくても、夜中に何度もこのような浅い覚醒を繰り返しているため、脳も体も十分に休むことができません。その結果、睡眠時間は十分なはずなのに眠りが浅く、質の悪い睡眠になってしまうのです。
集中力や学力にも影響?見過ごせない全身へのサイン
睡眠の質の低下は、お子さまの日中の活動、特に成長期に重要な脳の働きに深刻な影響を及ぼします。
質の悪い睡眠が続くと、次のようなサインが現れることがあります。
- ・集中力の低下
授業中にぼーっとしてしまったり、落ち着きがなくなったりします。 - ・記憶力の低下
睡眠中に記憶は整理・定着されるため、学習した内容が身につきにくくなります。 - ・日中の強い眠気
活動中にもかかわらず、あくびを繰り返したり、うとうとしたりします。 - ・情緒の不安定
ささいなことでイライラしたり、感情の起伏が激しくなったりします。
これらの問題は、結果として学力の低下に繋がってしまう可能性があります。また、呼吸の観点からも問題があります。鼻には、吸い込んだ空気の温度や湿度を調節し、ウイルスやホコリなどを除去するフィルターの役割があります。
口呼吸ではこのフィルター機能を使わずに、冷たく乾燥した汚れた空気が直接喉に届いてしまいます。そのため、風邪をひきやすくなったり、アレルギー反応が出やすくなったりするなど、免疫力の低下にも繋がるのです。このように、口呼吸はお口の中だけの問題ではなく、お子さまの学習能力や全身の健康にまで影響を及ぼす、見過ごせない重要なサインと言えるでしょう。
我が子の口呼吸の原因は?自宅でできる簡単チェックと改善法
「うちの子、いつもお口がぽかんと開いている気がする…」
「寝ている時のいびきが気になる…」
お子さまの何気ない癖や習慣が、実は「口呼吸」のサインかもしれません。口呼吸は、歯並びの乱れだけでなく、虫歯や全身の健康にも影響を及ぼすことがあります。
しかし、原因に気づき、ご家庭でできることから早めに対策を始めることで、お子さまの健やかな成長をサポートできます。ここでは、ご自宅でできる口呼吸のチェック方法と、親子で楽しく取り組める改善法を、歯科医師の視点から詳しく解説します。

【専門家監修】当てはまったら要注意!口呼吸のサイン10項目
お子さまの口呼吸は、日常生活の中にサインが隠されています。テレビを見ている時や眠っている時など、リラックスしている時に注意して観察してみてください。以下の項目に複数当てはまる場合は、口呼吸が習慣になっている可能性があります。
【お子さまの口呼吸チェックリスト】
- □ 集中している時や、ぼーっとテレビを見ている時に口が半開きになっている
無意識の状態でお口周りの筋肉が緩み、口が閉じていられないサインです。 - □ 唇がカサカサに乾いていることが多い
口を開けているため常に空気に触れ、唾液による潤いが失われている状態です。 - □ 朝起きた時に、のどが痛いと言うことがある
口呼吸によって乾燥した空気が直接喉を刺激し、炎症を起こしやすくなります。 - □ 寝ている時にいびきをかく、または歯ぎしりをする
口呼吸で舌が喉の奥に落ち込み、空気の通り道が狭くなっている証拠です。 - □ 食べ物を食べる時に「クチャクチャ」と音を立てる
口を閉じて鼻で呼吸しながら食べることができず、口を開けて呼吸しながら食べている可能性があります。 - □ 上唇の形が富士山のようにめくれあがっている
口を閉じようとする筋肉が弱く、常に口が開いているため唇の形が変化してしまいます。 - □ 前歯の間にすき間があったり、歯の表面が乾いていたりする
口呼吸による舌の癖や、唇が閉じないことが歯並びに影響しているサインです。 - □ 前歯の表面に茶色っぽい着色汚れ(ステイン)がつきやすい
唾液による洗浄作用が働かず、歯の表面が乾燥して汚れが付着しやすくなっています。 - □ 発音がはっきりせず、滑舌が気になることがある
舌が正しい位置になく、筋肉が十分に発達していないため、特定の音が発音しにくくなります。 - □ 食事中によくむせる、または食べるのが遅い
食べ物を飲み込む(嚥下)機能が未熟で、呼吸との連携がうまくいっていない可能性があります。
これらのサインは、お口周りの筋肉が正しく使えていないという体からのメッセージです。一つでも気になる項目があれば、一度専門家にご相談ください。
鼻づまりだけじゃない 口呼吸を引き起こす舌の癖や指しゃぶり
口呼吸の原因と聞くと、アレルギー性鼻炎や風邪による「鼻づまり」を思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし、鼻が通っているにもかかわらず口呼吸になってしまうお子さまは少なくありません。その背景には、以下のようなお口の癖や発達の問題が隠れていることがあります。
- ・舌の位置が低い(低位舌)
本来、舌は上あごにぴったりと収まっています。この舌の位置が下がっていると、空気の通り道を狭めてしまい、楽に呼吸するために無意識に口を開けてしまいます。 - ・お口周りの筋肉の力不足
唇を閉じる筋肉(口輪筋)や、食べ物を噛む筋肉が弱いと、意識していない時に口を閉じておくことが難しくなります。 - ・指しゃぶりや爪噛みの癖
指しゃぶりなどの癖が長く続くと、指が前歯を押してしまい出っ歯になったり、上下の歯の間に隙間ができたりして、物理的に唇が閉じにくくなります。 - ・柔らかいもの中心の食生活
あまり噛まなくても飲み込める柔らかい食事ばかりでは、あごの骨の成長が促されず、お口周りの筋肉も鍛えられません。その結果、筋力不足を招きます。
これらの原因は一つだけでなく、複数が複雑に絡み合っていることも珍しくありません。鼻づまりがないのに口呼吸が続いている場合は、お口の中に原因がある可能性を考えましょう。
歯医者と耳鼻咽喉科、どちらに先に相談すべきか判断のポイント
お子さまの口呼吸に気づいた時、「歯医者さんと耳鼻科、どちらに相談すればいいの?」と迷われる保護者の方は多くいらっしゃいます。どちらを受診すべきか判断するためのポイントは、「鼻の通り具合」と「いびきの状態」です。
| 相談先 | こんな症状がある場合に受診を検討しましょう |
|---|---|
| 耳鼻咽喉科 | ・いつも鼻がつまっている、鼻水が出ている ・アレルギー性鼻炎や花粉症、ちくのう症(副鼻腔炎)がある ・いびきがひどく、寝ている時に呼吸が止まっているように見えることがある |
| 歯科医院 (小児歯科) | ・鼻は通っているのに、口がぽかんと開いている ・出っ歯や受け口、ガタガタの歯並びなど、歯並びの乱れが気になる ・指しゃぶりや舌を前に出す癖が治らない ・食事の時にうまく飲み込めていないように見える |
まずは、鼻づまりなど鼻の病気が明らかな場合は、耳鼻咽喉科で原因を取り除く治療が必要です。鼻の通りに問題がないのに口呼吸が改善されない場合や、歯並びに気になる点がある場合は、ぜひ当院のような歯科医院にご相談ください。原因によっては、両方の科が連携して治療を進めることもあります。
親子で簡単!お口の筋肉を鍛える「あいうべ体操」のやり方
口呼吸の改善には、唇や舌など、お口周りの筋肉(口腔周囲筋)を鍛え、舌を正しい位置に戻すトレーニングが効果的です。そこで、ご家庭で簡単に楽しく取り組めるのが「あいうべ体操」です。
【あいうべ体操のやり方】
- 1.「あー」
喉の奥が見えるくらい、口を大きく縦に開けます。 - 2.「いー」
口をできるだけ真横に大きく広げます。首に筋が浮き出るくらいしっかりと行いましょう。 - 3.「うー」
唇をできるだけ前に突き出します。タコのような口をイメージしてください。 - 4.「べー」
舌をあごの先につけるようなイメージで、下に向かって思い切り伸ばします。
この「あー、いー、うー、べー」を1セットとし、1日に30セットを目標に行います。声は出さなくても大丈夫です。食後やお風呂の時間など、毎日決まったタイミングで行うと習慣にしやすくなります。親子で鏡を見ながら、どちらが上手にできるか競争するのも良いでしょう。毎日少しずつでも続けることが、筋肉を育て、正しい呼吸への第一歩となります。
歯並びを悪化させないための食事や正しい姿勢の習慣
トレーニングと合わせて、日々の生活習慣を見直すことも、口呼吸の改善と健やかな歯並びの育成には欠かせません。特に「食事」と「姿勢」は、お子さまの成長に大きく関わります。
- ・よく噛んで食べる習慣をつけましょう
一口30回を目安に、左右の歯でバランスよく噛むことを意識させてあげてください。よく噛むことで、あごの骨の成長が促され、お口周りの筋肉が自然に鍛えられます。食事のメニューに、きんぴらごぼうのような根菜類や、きのこ、小魚など、少し歯ごたえのある食材を取り入れるのもおすすめです。 - ・正しい姿勢を意識しましょう
猫背の姿勢は、気道を圧迫し、バランスを取るためにあごが前に出て口が開きやすくなります。- 椅子の高さ
椅子に深く座り、足の裏全体が床にしっかりとつく高さに調整しましょう。 - テーブルの高さ
おへそのあたりにテーブルがくるのが理想です。 - テレビやスマホを見る時
見上げる、または見下ろす姿勢が続くと、首やあごに負担がかかります。目線の高さで見るように環境を整えましょう。
- 椅子の高さ
これらの習慣は、お子さまの将来の健康な体づくりの基礎となります。一度にすべて変えるのは難しいかもしれませんが、まずは一つから、できることを見つけて親子で意識してみてください。
口呼吸と歯並びの治療法を徹底比較 何歳から始める?費用は?
お子さまの口呼吸や歯並びについて、このような疑問をお持ちではないでしょうか。
「治療はいつから始めるのが一番良いの?」
「どんな治療法があって、うちの子にはどれが合うのだろう?」
「費用は一体どれくらいかかるのかしら…」
これらの疑問や不安は、お子さまの健やかな成長を願う保護者の皆さまにとって、ごく自然なことです。口呼吸と歯並びの治療は、単に見た目をきれいに整えるためだけのものではありません。将来にわたる虫歯のリスクを減らし、正しい噛み合わせでしっかり食事をとる機能を育て、全身の健康を守るための大切な医療行為です。
治療法には、お口周りの筋肉を鍛えるトレーニングから、様々な矯正装置を用いるものまで、幅広い選択肢があります。お子さま一人ひとりのお口の状態や、あごの成長段階によって最適なアプローチは異なります。まずはどのような治療法があるのかを知り、お子さまにとって最善の道筋を一緒に考えていきましょう。

治療開始のベストタイミングは?年齢別の治療アプローチを解説
口呼吸や歯並びの治療において、「早すぎる」ということはありません。むしろ、あごの骨がまだ柔らかく成長段階にあるうちから介入することで、より良い結果を得やすく、将来的な負担を軽減できる可能性があります。お子さまの成長段階に合わせた、主な治療アプローチをご紹介します。
- ・幼児期(3〜5歳頃):癖の改善と、健やかな成長の「土台づくり」の時期
この時期は、指しゃぶりや舌で前歯を押す癖など、歯並びに悪影響を及ぼす習慣を改善する指導が中心となります。また、お口周りの筋肉を正しく使えるようにするトレーニング(口腔筋機能療法:MFT)を始めるのにも非常に良い時期です。あごの骨の健やかな成長を促すことで、永久歯がきちんと並ぶためのスペースを確保し、将来の本格的な矯正治療が不要になる可能性もあります。 - ・学童期前半(6〜9歳頃):あごの成長をコントロールする「ゴールデンエイジ」
乳歯から永久歯への生え変わりが始まり、あごの骨も大きく成長するこの時期は、矯正治療を始める絶好のタイミングです。この時期に行う治療を「Ⅰ期治療(骨格矯正)」と呼びます。取り外しのできる装置などを用いて、狭くなった上あごの幅を広げたり、上下のあごの成長バランスを整えたりします。この段階で土台となるあごの骨格を正しく導くことで、将来的に永久歯を抜かずに歯並びを整えられる可能性が大きく高まります。 - ・学童期後半(10歳以降):歯並びを本格的に整える仕上げの時期
永久歯がほぼ生えそろい、あごの成長も終盤に近づく時期です。歯一つひとつの位置をミクロの単位で正確に整える「Ⅱ期治療(歯列矯正)」が中心となります。ワイヤーとブラケットを用いた矯正装置などを使って、最終的な美しい歯並びと、機能的に正しい噛み合わせを確立することを目指します。Ⅰ期治療を適切に行っている場合、このⅡ期治療が短期間で済んだり、不要になったりすることもあります。
お子さまのお口の状態によって最適な治療開始時期は異なります。気になるサインがあれば、まずは一度、専門家にご相談ください。
【治療法比較表】MFT・マウスピース矯正・ワイヤー矯正の違い
口呼吸と歯並びの治療には、主に3つのアプローチがあります。それぞれの特徴を理解し、お子さまの年齢や歯並びの状態、生活スタイルなどを総合的に考慮して、最適な方法を選択することが重要です。
| 治療法 | 特徴 | 主な対象年齢 |
|---|---|---|
| MFT (口腔筋機能療法) | 舌や唇の正しい位置、飲み込み方などを再学習するトレーニング。歯並びが悪くなった「根本原因」にアプローチし、治療後の後戻りを防ぐ。 | 全年齢 (特に幼児期〜学童期) |
| マウスピース型矯正装置 | 透明で取り外しが可能な装置を、決められた時間装着し、段階的に交換しながら歯を動かす。見た目が目立ちにくく、食事や歯磨きがしやすい。 | 混合歯列期 (乳歯と永久歯が混在する時期) 〜永久歯列期 |
| ワイヤー矯正 (ブラケット矯正) | 歯の表面にブラケットという小さな装置を付け、ワイヤーを通して力をかけ歯を動かす。最も歴史と実績があり、幅広い歯並びの乱れに対応できる。 | 主に永久歯が生えそろってから |
これらの治療は、単独で行うこともあれば、MFTと矯正治療を組み合わせて行うこともあります。例えば、矯正装置で歯並びを整えながら、MFTで舌の癖を直すことで、治療効果を高め、後戻りのリスクを大幅に減らすことができます。当院では、矯正を専門とする歯科医師が、お子さま一人ひとりに最適な治療計画をご提案します。
メリット・デメリット・費用・期間を分かりやすく解説
それぞれの治療法について、より詳しく見ていきましょう。治療を選択する際の参考にしてください。
- ・MFT(口腔筋機能療法)
- メリット
歯並びを悪化させる根本原因(舌の癖や口呼吸)を改善できます。そのため、矯正治療後の後戻りのリスクを大きく減らすことが期待できます。 - デメリット
効果を得るためには、お子さま自身が毎日トレーニングに継続して取り組む必要があります。ご家族の協力が不可欠です。 - 費用・期間
矯正治療と並行して行うことが多く、費用は矯正治療費に含まれる場合や、月々のトレーニング費用が別途発生する場合があります。期間は数ヶ月から数年にわたることが一般的です。
- メリット
- ・マウスピース型矯正装置
- メリット
装置が透明で目立ちません。食事や歯磨きの際には取り外せるため、お口の中を清潔に保ちやすいです。スポーツなどへの影響も少ないです。 - デメリット
1日20時間以上など、決められた装着時間を守らないと計画通りに歯が動きません。お子さまの自己管理能力が重要になります。歯並びの状態によっては適応できない場合があります。 - 費用・期間
費用は40万円~90万円程度が目安です。治療期間は歯並びの状態により異なりますが、一般的に1年~3年程度です。
- メリット
- ・ワイヤー矯正(ブラケット矯正)
- メリット
対応できる歯並びの種類が最も多く、複雑な症例でも確実性の高い治療結果が期待できます。装置は固定式なので、自己管理の負担は少ないです。 - デメリット
金属の装置は見た目が目立ちます。食べ物が挟まりやすく、歯磨きに時間と工夫が必要です。装置の調整後、数日間痛みを感じることがあります。 - 費用・期間
費用は70万円~120万円程度が目安です。治療期間は1年半~3年程度です。
- メリット
※上記に記載した費用や期間はあくまで一般的な目安です。お子さまのお口の状態によって大きく異なりますので、詳しくは精密検査・診断の際にご説明いたします。
医療費控除は使える?知っておきたい費用の負担を軽くする方法
お子さまの矯正治療には、まとまった費用がかかります。しかし、国の制度である「医療費控除」を利用することで、家計の負担を軽減できる可能性があります。
医療費控除とは?
1年間(1月1日~12月31日)にご自身やご家族のために支払った医療費の合計が10万円を超えた場合に、確定申告を行うことで、納めた所得税の一部が還付(返金)される制度です。
お子さまの矯正治療は対象になる?
大人の矯正治療では「見た目を美しくするため」という審美目的と判断されると対象外になることがありますが、お子さまの矯正治療は違います。「あごの骨の健やかな発育を促すため」「噛み合わせなどの機能を改善するため」という医療目的で行われるため、ほとんどの場合、医療費控除の対象として認められます。
手続きのために準備しておきたいもの
- ・歯科医院が発行した領収書
再発行はできませんので、専用のファイルなどで大切に保管してください。 - ・通院にかかった交通費の記録
バスや電車など公共交通機関の利用が対象です。日付、交通機関、区間、料金をメモしておきましょう。 - ・源泉徴収票(会社員の方)
治療を開始する際に、歯科医師に診断書を作成してもらうと、より手続きがスムーズに進みます。ご不明な点があれば、お気軽にスタッフにご質問ください。また、デンタルローンや院内での分割払いなど、お支払い方法についても柔軟にご相談いただけます。
治療中の痛みや学校生活は?親ができるサポートと心構え
矯正治療を成功させるためには、お子さま本人の頑張りはもちろん、ご家族のサポートが何よりも大切です。治療中にお子さまが安心して過ごせるよう、親御さんに知っておいていただきたいポイントと心構えをお伝えします。
- ・治療中の痛みについて
ワイヤー矯正で装置を調整した後や、新しいマウスピースに交換した後の2~3日は、歯が動くことによる痛みや、締め付けられるような違和感が出ることがあります。多くの場合、痛みは自然に和らぎますが、お子さまが辛そうにしている時は、うどんやおかゆ、スープなど、あまり噛まなくても食べられる柔らかい食事を用意してあげましょう。 - ・学校生活での注意点
- 食事
装置に食べ物が詰まりやすくなります。特にワイヤー矯正の場合、粘着性の高いガムやキャラメル、硬いおせんべいなどは装置が外れる原因になるため避けるように伝えてあげてください。給食後の歯磨きを習慣づけることも大切です。 - 歯磨き
装置の周りは磨き残しが多くなり、虫歯のリスクが高まります。ご家庭での仕上げ磨きに加え、小さなヘッドの歯ブラシや、装置の周りを磨きやすいタフトブラシなどを活用し、丁寧なケアをサポートしてあげてください。 - 運動
基本的に運動の制限はありません。ただし、サッカーやバスケットボール、格闘技など、他の子と接触する可能性のある激しいスポーツをする場合は、お口の中を怪我から守るためのマウスガードの使用をおすすめします。
- 食事
- ・ご家族ができるサポート
何よりも大切なのは、お子さまの努力を認め、前向きな言葉で励ましてあげることです。「少しずつ歯並びがきれいになってきたね」「頑張っているね」といった声かけが、お子さまの治療へのモチベーションを支えます。また、定期的な通院へのご協力や、治療で不安なことがあれば「今度先生に一緒に聞いてみようか」と寄り添う姿勢が、治療を成功へと導く鍵となります。親子で二人三脚となって、ゴールを目指しましょう。
まとめ
今回は、お子さまの口呼吸やいびきが歯並びや全身の健康にどう関係しているのか、その原因から治療法まで詳しく解説しました。
「うちの子だけかな?」と気になっているそのサインは、単なる癖ではなく、顎の成長や顔つき、虫歯のリスク、睡眠の質、日中の集中力にまで影響を及ぼす可能性があります。しかし、原因に早く気づき、ご家庭でのトレーニングや専門的な治療を適切な時期に始めることで、お子さまの健やかな成長を力強くサポートできます。
一人で悩まず、まずはお気軽に歯科医院へご相談ください。専門家と一緒に、お子さまにとって最適な解決策を見つけることが、輝く未来への大切な第一歩になります。


