重度歯周病
重度歯周病について

歯周病がさらに進行し、歯を支える歯槽骨の大部分が失われる段階を指します。この状態では、歯がぐらつき、最終的に抜け落ちる可能性が高くなります。また、口腔内だけでなく、全身疾患との関連性も強くなるため、早急な治療が必要です。
重度歯周病の特徴
症状
- 歯茎の重度な腫れや炎症
(赤紫色になることもある)。 - 歯茎からの頻繁な出血や膿の排出。
- 歯周ポケットが6mm以上と深くなる。
- 歯の大きなぐらつき
(動揺度2~3)。 - 歯茎の大きな後退
(歯が異常に長く見える)。 - 咬む際の痛みや違和感。
- 強い口臭が持続する。

歯周ポケットと歯槽骨
- 歯周ポケット内で細菌が増殖し、歯槽骨が大幅に破壊されている。
- X線写真で歯槽骨の50%以上が失われていることが確認される場合もある。

全身への影響
歯周病菌や炎症が全身に影響を与え、糖尿病、心疾患、誤嚥性肺炎、早産などのリスクが高まる。

重度歯周病の原因
放置された中等度歯周病
適切な治療を受けないことで症状が悪化。
生活習慣
喫煙、ストレス、
不規則な食生活が進行を助長。
免疫力の低下
糖尿病などの
慢性疾患や加齢による影響。
重度歯周病の治療の流れ
重度歯周病では、歯をできる限り保存しながら炎症を抑え、症状の進行を防ぐ治療が行われます。ただし、状況によっては抜歯が必要になる場合もあります。
初期治療
- スケーリング・ルートプレーニング(SRP)
- 歯と歯周ポケット内の歯垢・歯石を除去。
- 細菌の活動を抑え、歯茎の炎症を軽減。
- 抗菌療法
- 歯周ポケット内に抗菌薬を注入、または抗生物質を服用。

外科的治療
- フラップ手術
- 歯茎を切開し、
深部の歯石や感染組織を除去。 - 歯周ポケットの深さを減少させる。
- 歯茎を切開し、
- 歯周組織再生療法
- 歯槽骨や歯周組織が大幅に破壊されている場合、人工骨や成長因子を用いて組織の再生を促す。
- 抜歯(必要に応じて)
- 保存が難しい歯(大きくぐらついている、感染が広がっているなど)は抜歯し、周囲の健康な組織への悪影響を防ぐ。

補綴治療(歯の機能回復)
- ブリッジ・入れ歯
- 失われた歯を補うための補綴治療を行う。
- インプラント
- 全身状態が良好で口腔環境が整えば、インプラントを選択することも可能。

全身管理
糖尿病などの基礎疾患がある場合、その管理を医師と連携して行う。

重度歯周病の予防と管理
重度歯周病は進行を完全に止めることが難しい場合がありますが、適切な予防と管理により、進行を遅らせることが可能です。
定期的な歯科受診
- プロフェッショナルケア(PMTC)
を3~4か月ごとに受ける。 - 歯周ポケットの状態を定期的にチェック。

徹底したセルフケア
- ブラッシングの徹底
- 軟らかめの歯ブラシを使い、
歯と歯茎の境目を丁寧に磨く。
- 軟らかめの歯ブラシを使い、
- 補助清掃用具の使用
- 歯間ブラシやデンタルフロスで
歯間部の汚れを除去。
- 歯間ブラシやデンタルフロスで

生活習慣の見直し
- 禁煙:
喫煙は歯周病の進行を大幅に早める。 - 食生活の改善:
ビタミンCやカルシウムを
豊富に含む食品を摂取。

重度歯周病のポイント
- 重度歯周病は、歯の喪失や全身疾患への影響が大きいため、早急な治療が必要です。
- 歯を可能な限り保存することを目指しつつ、全身の健康を考慮した治療計画を立てることが重要です。
- 治療後のメンテナンスが、長期的な歯の健康維持の鍵となります。
重度歯周病においては、患者自身のセルフケアと専門的な治療の両輪で進行を抑え、健康を取り戻すことを目指しましょう。
重度歯周病における保険治療
重度歯周病では、歯茎が大きく腫れ、出血が頻繁に起こり、歯周ポケットが深くなります。歯槽骨が大量に吸収され、歯がぐらつくことがあり、最悪の場合、歯を失うリスクが高くなります。早期の治療が非常に重要です
重度歯周病に対する保険治療では、以下のような治療法が適用されます。
スケーリング(歯石除去)
概要
歯茎の炎症を引き起こす歯石を取り除く治療です。重度歯周病では、歯茎が腫れて歯石が歯根にまで広がっているため、スケーリングで歯石を除去します。
保険適用
基本的にスケーリングは保険適用で提供されますが、重度の場合、歯根まで歯石が付いているため、より徹底的な治療が必要になります。
ルートプレーニング(歯根の清掃)
概要
歯根に付着した歯石やバクテリアを取り除く治療です。歯根面を滑らかにすることで、再発防止や歯周ポケットの縮小を目指します。
保険適用
重度歯周病では、ルートプレーニングが重要です。歯周ポケットの深さに応じて、歯根の清掃を行い、感染源を取り除きます。
歯周外科手術(必要に応じて)
概要
歯周病が進行し、歯茎の組織や歯槽骨が深刻に損傷している場合、手術が必要となることがあります。歯周外科手術では、歯周ポケットを浅くするための手術や、歯槽骨を再生する手術が行われることがあります。
保険適用
保険が適用される場合もありますが、手術内容によっては自費となることもあります。手術が必要な場合、詳細な診断に基づいて進められます。
歯磨き指導・口腔ケアのアドバイス
概要
歯磨きが不十分であると、歯周病の進行が止まらないため、患者に対して正しいブラッシング方法やフロスの使い方を指導します。特に重度の歯周病では、患者のセルフケアが非常に重要です。
保険適用
保険内で、歯科衛生士からの指導が行われることがあります。
歯周病の定期的な管理と経過観察
概要
定期的に歯周病の進行状況を確認し、必要に応じて追加の治療を行います。重度歯周病の場合、治療後の経過観察が特に重要です。
保険適用
定期的なチェックや歯周ポケットの深さの測定は保険適用となります。
重度歯周病治療の
保険適用範囲の制限
重度歯周病の治療には、いくつかの制限があります。
- 歯周外科手術の保険適用: 手術が必要な場合でも、すべての歯周外科手術が保険適用となるわけではなく、治療内容によっては自費となることもあります。例えば、再生療法や高度な治療は自費治療になることがあります。
- 材料の制限: 保険治療では使用できる材料が限られているため、美容面や耐久性を重視した材料(例えば、セラミックなど)は選べません。
重度歯周病治療のメリット
- コストが比較的抑えられる: 基本的な治療(スケーリング、ルートプレーニング)は保険適用で受けられ、治療費の負担が軽減されます。
- 進行の予防: 適切な治療を受けることで、歯周病の進行を抑え、歯を失うリスクを減らすことができます。
- 歯の保存: 重度歯周病でも、早期に治療を行うことで歯を保存する可能性が高くなります。
重度歯周病治療のデメリット
- 自費治療が必要な場合がある: 歯周外科手術や最新の治療法は、保険適用外となり、自費での治療が必要です。
- 治療が長期化することがある: 重度歯周病の治療は、長期間にわたる治療と定期的な経過観察が必要となることがあります。
まとめ
重度歯周病の治療では、スケーリング、ルートプレーニング、歯周外科手術など、進行した歯周病に対応するための積極的な治療が必要となります。保険適用の範囲内で、進行を防ぎ、歯を保存するための治療が提供されますが、手術が必要な場合や高度な治療が求められる場合は、自費治療となることがあります。
治療後も経過観察が重要で、患者自身のセルフケアが歯周病の管理において大きな役割を果たします。